「ランタン・フローティング」とは
言わずと知れた常夏の島、ハワイですが、その照りつける太陽、真っ青な海はまさに、我々の考える南国のイメージそのものです。
古くから新婚旅行、観光地として盤石の人気を誇っています。
今回は、そんなハワイで実施されるお祭り「ランタン・フローティング」についてご紹介します。
太陽が照り付ける中での真っ青な海もいいですが、夕暮れ時、茜色の海に浮かぶランタンたちの光景もまた、素晴らしいものです。
その見どころや歴史など、詳細にレポートしていければと思います。
開催場所、開催時期
「ランタン・フローティング」は、アラモアナ・ビーチパークおよび、マジック・アイランドという場所で実施されます。
まずアラモアナ・ビーチパークについてですが、1920年代までキアヴェツリーや葦(あし)、ヤシの木が茂る湿地帯であり、市のごみ捨て場だった土地なんです。
1931年から「モアナ・パーク」として開発が始まり、1934年の開園式には当時のアメリカ大統領、フランクリン・ルーズベルトも出席しました。
現在の名称に至ったのは1947年のことで、ハワイ語で「海への小道」という意味を持つアラモアナ・ビーチは、今ではワイキキ・ビーチにならぶ主要観光地として、その名を馳せています。
ワイキキ・ビーチがまさに観光地という雰囲気を醸し出している一方、アラモアナ・ビーチの雰囲気はとてもローカル、かつアットホームな感じがします。
なんといっても立地が便利で、付近にはハワイは誇る巨大ショッピングモール、アラモアナ・センターがあるので、海水浴にもうってつけではないでしょうか。
男性陣がビーチで遊んでいる間、女性みんなでショッピングなんてことも可能で、レジャースポットとして非常に優秀なのです。
一方マジック・アイランドとは、ワイキキ寄りの砂浜に位置する人口の「島」のことで、島といえども海に浮かんでいるわけではなく、海に突き出た形となっています。
大手デベロッパーによりつくられた島ですが、当初は島をふたつつくり、そこに一大リゾートエリアを開発する予定だったそうです。
しかし、計画は頓挫し、開発半ばで残されたマジック・アイランドは市の力によって復活、市の公園として、多くのローカルファミリーに親しまれています。
「ランタン・フローティング」だけでなく、7月4日に実施されるインデペンデンス・デイ(アメリカ独立記念日)の開催地としても知られています。
なお、開催時期は5月の最終月曜日で、メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)に灯篭流しは実施されます。
2017年には5万人の観光客が見守る中、7000以上もの灯篭が海上を優しく照らしました。
歴史
2017年で19回目の開催を迎えたこちらのイベントであり、メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)に実施することは前に述べました。
そもそも「メモリアル・デー」とは何なのか。
日本人にはあまり馴染みがありませんが、アメリカにおけるこのメモリアル・デーは、非常に意味のある祝日のひとつです。
そもそもとしての意味合いは、南北戦争(1861~1865)の終結記念日であり、戦没者を追悼する目的で定められたものです。
兵士のお墓にはお花をそえ、追悼する習慣が古代から存在していたことから、当時は「デコレーション・デー」として挙行されていました。
やがて、第二次世界大戦を通して現在の名称となり、南北戦争に限らず、戦争で国のため命を落とした軍人全員を追悼する日として、さまざまな行事が行われるようになりました。
メモリアル・デーには各地で午前には半旗が、午後からは通常の国旗掲揚がなされます。
半旗にするのは過去、100万を超える人々の命が犠牲となったのを胸に刻むためであり、午後にはその犠牲を無駄にしないという決意、正義のために戦い続けることへの決意の表明として、通常の国旗掲揚を行うのです。
さて、今回の「ランタン・フローティング」もまた、メモリアル・デーにおける式典の一環で、実はこの儀式を主宰しているのは「真如苑」という日本初の教団です。
2017年の式典にて、苑主である伊藤真聰氏はこう述べています。
「他のために祈り行動することで自らの善き個性は輝き、誰かの役に立つ大切な存在になることができます。身近な課題や世界の困難から目をそらすことなく、あらゆる枠を超えて利他の行動に踏み出す勇気が大切です。大海に浮かぶこの灯籠の光の如く、遍くを照らし喜びを広げる融和の心と行動を続けてまいりましょう。」
国を超えてこうした活動ができることは素晴らしいですね。
式典の様子は現地のメディアによって放映、取材され、式典当日に寄せられた寄付金は、アラモアナ・ビーチの維持、管理のため、ホノルル市に全額寄付されるそうです。
見どころ
会場がオープンするのは午前10時で、ランタン・リクエストテントという場所が設立されていますので、そちらで灯篭を受け取ることができます。
一見すると長蛇の列ですが、多くのボランティアのみなさまのおかげで受け取りはスムーズであり、10分ほどで灯篭を受け取ることができますが、先着順ですので早めに行動するのがいいでしょう。
灯篭を受け取って、ビーチへと歩みを進めていきます。
ここではふたつの列があり、一方は自分で灯篭を流したい方向け、もう一方は船の船員に灯篭を流してもらいたい方向けです。自身の望む列へと加わりましょう。
セレモニー自体は午後6時から始まりますので、それまでに灯篭にメッセージを書き込みます。
式典が近付くにつれ、ビーチも人で埋め尽くされていきます。
メッセージを書くことひとつとっても、泣きながら書き込む人や写真を貼って飾り付ける人、家族総出で書き込みをする人など様々です。
日も暮れてきて午後6時、いよいよセレモニーの始まりです。
日本の厳粛なムードとは裏腹に、戦死者の名誉を称え、ライブやパレードで盛り上がるのがアメリカ式で、コンチシェルや真如太鼓、ハワイアンソングのライブが行われたのち、いよいよメインイベントです。
船に積まれた灯篭が、一斉に海へと流されていき、それが終わると、いよいよ今度は私たちの出番です。
太鼓の合図とともに、砂浜から一斉に灯篭を手放します。
夕暮れ時を照らす灯篭の灯は、なんとも神秘的で、その見たことのない風景に胸を撃たれながら、式典は終わりを告げるのです。
最後に
かつて日本はハワイの真珠湾に向けて、奇襲攻撃を実施しました。
真珠湾攻撃による米兵死者は2000人超とされています。
戦争の経緯がどうであれ、人を殺めるというのは決してあってはならないことです。
時を超え、最近でも日本とアメリカの間には日米安全保障、米軍基地問題など、軍事をめぐる多くの問題が存在しています。
その一方で、ハワイの一画でこうした式典が行われていることは重要な意味があるし、もっと広く知られるべきだと思います。
ハワイの夕暮れ、灯篭を流しながら、世界の在り方、人の命の在り方に、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
「ランタン・フローティング」に、ぜひ、足を運んでみてください。
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