「沙知代はひとり」に見る野村夫妻の関係性
元プロ野球選手・監督の野村克也氏の妻で、タレントの野村沙知代さんが、「虚血性心不全」により急逝されました。
虚血性心不全とは、心臓の筋肉(心筋)への血流が阻害されることにより起こる心臓病で、心筋に栄養を送る血管である「冠状動脈」が動脈硬化などを原因として狭くなったり閉塞したりすることで発症し、心筋の収縮力が弱まり、心不全状態(虚血性心不全)になることを言います。
最近では2016年に、お笑いタレントの前田健さんがこの病気のため44歳の若さで亡くなるなど、急逝となる可能性も少なくない病気のようです。
これを受けて、元プロ野球選手・監督の野村克也さんは憔悴しきった様子で自宅前での取材に応じました。
この時の様子からも、野村夫妻の絆の強さ、また、いかに克也さんが沙知代さんに支えられてきたかが伺えますが、今回の記事では、お二人の歴史や、そこから感じられる沙知代さんの貢献について、考えてみたいと思います。
始まりはダブル不倫
克也氏は1978年、沙知代さんと結婚しており、以来40年近くにわたり連れ添ったことになります。
当時、プロ野球・南海の捕手だった克也氏は、1970年から選手兼任監督を務めていました。
克也さんと沙知代さんの出会いは、まさにその1970年、沙知代さん38才、克也さんが35才の時でした。
沙知代さんは当時は輸入代理業を営む会社の経営者で、日米を往復するバリバリのキャリアウーマンで、アメリカに夫と2人の子供(団野村氏、ケニー野村氏)もいました。
一方の克也さんは、当時の妻との離婚訴訟の真っ最中であり、お二人の始まりは、今でいうところの「ダブル不倫」であると言えます。
その後に結婚した両名ですが、後に沙知代さんや息子の問題行動等が大々的に報道され、1977年に南海を解任されることになります。
このとき、球団から「野球を取るのか、女を取るのか」と迫られた克也氏が「仕事は他にもあるが、沙知代はひとり」と返答し、自ら球団を去ったとも伝えられました。この時から、克也さんの「沙知代さんをかばい続ける人生」が始まったのです。
途切れないトラブル
1990年代後半には、テレビコメンテーターやバラエティータレントとして活躍し始めた沙知代さんでしたが、1998年の神田うのさんへのビンタ事件、1999年の浅香光代さんとのミッチー・サッチー報道など、ワイドショーを騒がせる事件が続きました。
さらに沙知代さんが2001年には2億円にも上る脱税容疑で逮捕され、2002年に有罪判決が出ると、克也氏は当時監督を務めていた阪神タイガースを引責辞任する事態へとつながりました。
これらの経緯だけを見れば、沙知代さんは「悪妻」と呼ばれてもおかしくないのかもしれません。
しかし当の克也さんは口癖のように、「夫婦のことは、その夫婦にしかわからない」、そういって沙知代夫人をかばい続けてきたのです。
夫婦にしか見えない互いの支え合い
一見すると、夫に迷惑をかける妻と、それを必死にかばい続けるよき夫、のような構図に見える野村夫妻ですが、どの家族でも夫婦間にしかわからない関係というものはあるものです。
克也さんからメディアにこぼれた一事例が、1970年代のスキャンダル後の沙知代夫人の励ましです。
当時大阪を本拠地とした南海ホークスを追われ、不安に苦しんでいた克也さんへ、沙知代さんが一言「なんとかなるわよ」と、東京進出への後押ししたのです。
克也さんはTV番組等でも折に触れて自身の気弱さや自信のなさを吐露しますが、この時にも、沙知代夫人の励ましが大きく後押しをしてくれた事でしょう。
そしてこの動きが、1990年代にヤクルトスワローズでの黄金時代を築いたID野球を実現するきっかけとなったのです。
また、2002年の脱税容疑後も、「弱気になっちゃダメ」と克也さんを励まし続け、のちの楽天への監督就任にもつながっていきます。
克也さんは、阪神の監督辞任のタイミングで「自分の野球人生は終わり」と覚悟していたそうですが、見事な復活を遂げたことになります。
どちらも、沙知代さん自身が引き起こしたトラブルではありますが、その後の励ましや支えにより、克也さんは多くの実績を積み上げていくことができたのです。
そして、克也さん自身がTV等で話すように、これは克也さんだけで成し遂げた実績でなく、強い気持ちで克也さんを励まし続けた沙知代さんの献身も大いに影響したのではないでしょうか。
沙知代さんが亡くなって
世間的には悪妻としてのイメージが定着してしまっていた沙知代さんですが、もっとも近い存在である克也さんとしては、最愛かつ最重要な存在であったと思います。
しかし、現実として沙知代さんが死去し、82歳となっている今だからこそ、再度前を向いてほしいと思います。
これからプロ野球監督、というのは非常に厳しいようにも思いますが、その卓越した戦術眼や野球観を日本の野球界に引き続き提供していただけることを願ってやみません。
そして、「沙知代は一人」と言って大事にかばい続けた沙知代さんが、これまでに与えてくれた励まし、支え、強い気持ちを自分に取り戻して、また元気な姿でTV画面に登場してほしいと思います。
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