2018 大相撲五月場所 後半戦を前に
概略
日毎に緑の色が濃くなる季節を迎え、初夏の五月場所が盛り上がっています。
中日(なかび)を前に幕内では大関取りに挑む関脇栃ノ心がただ一人負けなし、そのあとを二横綱と平幕二人が追う展開です。
場所前の巡業でのアクシデントから、女人禁制に関する話題で土俵外が一時騒がしかったのですが、注目の栃ノ心が順調に星を重ねてくれていることで本来の盛り上がりを見せています。
これから後半に入ると、上位力士による白熱の取り組みが楽しみです。
テレビでアナウンサーの実況や解説をちゃんと理解できるように、相撲の基本的な技術や用語を整理してみます。
「とる」から「観る」への変化
かつてはどこの小学校にも土俵があり、みんな相撲の経験者でしたが、こんにち土俵を目にするのはテレビの大相撲くらいです。(かなり前の話ですみません。)
大相撲は、連日満員御礼が伝えられていて、若い女性のファンも着実に増えているので、相撲未経験のファンは今後も増える一方だと思われます。
ほとんどすべての取り組みが、わずか数秒から長くても数十秒で勝負が決し、誰にでもわかりやすい相撲ですが、千年を超える相撲の歴史で築き磨き上げられた力と技の応酬で、独特の専門用語によって説明されるものです。
実況中継では、アナウンサーも解説者もそれら普通に口にしていますが、相撲をとらなくなった若年層には馴染みがないものです。
以下は、より相撲を楽しく観るため、そして土俵上の力士が何をどうしているかが、わかるようになるための基本知識です。
仕切りと立ち会い
二人の力士が土俵中央に引かれた白線を前にして向き合い、膝を大きく開いて腰を落とすことを「蹲踞(そんきょ)」といます。
それから立ち上がり、腰を下ろしながら両拳を土俵に着く一連の動作を、「仕切り」と言います。
そしてこの仕切りから、相手にぶつかる状態までを「立ち会い」と言います。
立ち会い、自分の有利な体勢に持ち込めるかという、興味ある一瞬を分析するには、立ち会い直前の仕切りでの力士の体勢に注目です。
立ち会いに素早く強く前に出ようとしているときは、仕切り線から離れて後ろに下がって立ち、前かがみに低く腰を落とす姿勢をとることが多くなります。
一方、早く前に出るより、確実に相手を受け止めて四つに組んでやろうと考えるならば、仕切り線近くに立ち、上半身を真上に伸ばしやすいような姿勢をとるようになります。
前者は押し相撲のタイプに、また後者は四つ相撲のタイプに多くなります。
攻防
立ち会い後、突き押し相撲なら低く当たってかち上げてから、相手の状態を起こしてしまうことを狙い、四つ相撲が得意な力士ならば状態が前へ倒れないよう足を前に出して相手の前まわしをたぐろうとするなど、激しい攻防が繰り広げられます。
差す
せめぎ合いから脇を締め、相手の腕の内側に自分の腕を入れることを差すといい、差した手で相手のまわしをとると下手になります。
四つ
互いに指し手をとり、五分に組み合うことを四つに組むといいます。
上手とは組み合った腕が相手の腕の上にあることで、下にある方はまわしをとった指し手で、下手です。
右上手同士で組むと左四つ、左上手同士で組むと右四つと言います。
おっつけ
四つに組み合うまで差し手を争いますが、差してくる相手に対して、自分の肘を脇に押し付けるようにして相手の肘の外側からあてがい、しぼりあげるのをおっつけと言います。
相手の攻撃を防ぎながら攻撃にもなる重要な技術です。
上手と下手
よく言われることに、上手と下手はどちらが有利なのかという問題がありますが、上手は上から相手の下手を押さえつけて殺すことができるという利点があることから、一般に有利だとされています。
また上手を取った方が攻撃しやすい体制で、下手だとどうしても半身になり、防御に近くなると言われているようです。
上手は浅く、下手は深く
上手については前まわしの浅いところを取るようにして、相手の指し手を封じながらさらに上体を起こさせるなど有利に動くことができます。
逆に下手は深いところを取りに行き、頭をつけるなどして相手の上体を起こさせることができると非常に有利な形になります。
比較的体の小さな力士の定石と言えます。
双差し(もろざし)
両腕を指し、まわしを取った上体です。
有利な形とされます。また両上手は外四つと呼ばれます。
がっぷり四つ
互いに上手下手を取り胸があった状態で、次の展開がどうなるか注目される状況です。
一瞬動きが治って落ち着いたように見えることもありますが、両者とも次の展開を考え、まわしを引いたり、指し手を変えるため巻き返したり、揺さぶりをかけながら勝機を探るなど目がはなせません。
まとめ
大関取りで話題の栃ノ心関が得意とするのは右四つですが、有利とされる浅い左の上手を取るのは、それほど簡単ではありません。
あの怪力と長身で前まわしなど取られようものなら、ほぼ完全に勝機はなくなるから相手力士も必死です。
左を差して双手差しを狙ったり、突き放しながらいなしたりして、栃ノ心の十分にはさせまいと、必死にあの手この手をくり出します。
迫力満点のぶつかり合いとともに突き押しや張り手の応酬、そしてがっちりまわしをとって四つに組むその過程はわずか数秒ほどです。
ほんの刹那とも言える間のせめぎ合いの中で、繰り広げられる技の数々をしっかり見極められるようになると、実況や解説も今までとは違ってくるでしょうし、大相撲観戦がいっそう楽しくなると思います。
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