先進という言葉に惑わされず、先進医療の仕組みを考える

意外と知らていない先進医療の仕組み

三大成人病というのをご存じだと思います。

三大成人病とは、ガン・脳梗塞・糖尿病のことで、これらの病気を患うと入院や手術を受けることになります。

ところで、生命保険などに加入するとき、先進医療を受けた場合の補償額などと、記載されているのを見たことはありませんか。

先進医療というと、何だか最先端の医療技術だと思ってしまうのですが、これは大きな間違いですので、ここでは先進医療についてやさしく解説していきます。

ガンや脳梗塞といった病気にかかる率はとても高いです。

特にガンに関しては、2人に1人がかかる時代だとも言われています。

よくガンなどの治療を受ける場合、「先進医療を受けますか」といったことを聞かれます。

「先進」という言葉のイメージから多くの方が想像するのが、「先進＝最先端」というイメージで、「最先端の治療を受けることができる」と思い込んでしまいます。

しかし、これは大きな誤解となり、先進医療という言葉だけ独り歩きをしてしまったのです。

そこで、この医療について正しい知識を身につけることが大切となります。

民間の生命保険や医療保険の項目に、「先進医療を受けた場合の保険金はいくらです。」と記載されていることが多くあります。

では、実際に先進医療を受けた場合の自己負担額はどうなるのでしょうか。

たとえば、先進医療を含む治療を受け、総医療費が100万円だったとします。

この内、先進医療の費用が20万円だとすると、100万円から先進医療の費用分20万円を差し引いた80万円の3割である24万円と、先進医療費20万円を合わせた44万円を支払うことになります。
（実際は、通常医療費の80万円が高額療養費制度の適用となりますので、支払額はもう少し少ない金額となります。）

つまり先進医療を受けた場合、その医療行為にかかる費用全てが、自己負担となってしまうということです。

メディアなどで、よく「先進」という言葉が使われています。

この言葉のニュアンスから最先端と思われていますが、確かに産業などの場合は最先端かもしれませんが、医療技術における先進医療は、必ずしも最先端の優れた医療技術ではないのです。

では、先進医療とはどのような医療なのでしょうか。

先進医療とは、特定の大学病院などで研究・開発されているレベルの高い医療技術のうち、厚生労働大臣の承認を特別に受けた医療技術のことです。

令和2年4月1日現在で、81種類（厚生労働省ＨＰより）ありますが、ガン治療に関するモノが多くあります。

それぞれの医療技術は定期的に評価が行われ、その安全性と有効性が認められた場合に、健康保険が適用される「標準医療」に格上げとなって、先進医療の対象から外れるのです。

また、その逆に効果が見込めないと判断されれば、対象外となってしまいます。

以上が、先進医療の概要となります。

そしてこのことからもわかるように、先進医療の健康保険の適用が認められていない理由は、厚生労働省が安全性や有効性の面で、一般に普及するには不安な材料が残っているということです。

しかし、先進医療を受けることはできます。

その際、治療の効果の不明瞭さや後遺症の有無、治療費の全額自己負担といったリスクをしっかりと認識して受けることが重要です。

町の医院や総合病院などで、風邪や糖尿病、胃潰瘍、ヘルニアなどといったことで、私たちが普段受けている医療行為は、健康保険が適用される標準治療です。

「先進」と聞いて、特別とイメージするように「標準」という言葉を聞くと、平均的あるいは一般的と思ってしまいます。

そのため、標準医療は先進医療より劣る医療行為と思ってしまいがちでありますが、これも大きな間違いです。

先進医療の臨床結果で成果を上げて、副作用や後遺症なども少なくなり、安全性や有効性が認められれば格上げとなり、はじめて「標準医療」となるのです。

つまり、標準医療は、先進医療よりも優れた現時点での「最善の医療行為」ということになります。

ガンと宣告されても、治療を受ける際に「先進治療でお願いします」という方がいますが、ほとんどの方が先進医療の意味を理解されていないのではないでしょうか。

安全性や有効性がまだ認められていない先進医療よりも、安全性や有効性が認められている標準治療の範囲内で、病気を治すことがベストな選択といえます。

ガンの宣告や難病とされる病気の宣告を受けて治療を受ける際には、先進医療という早まった選択をしないようにすることが大切です。

というものの、こういった宣告を受ければ、誰でも藁をも掴む思いだろうと想像することができますが、何が自分の病気に対してベストな治療法なのか、主治医としっかりと相談して治療に専念するのが好ましいと思います。

ガンや難病だと宣告を受けたとき、最善の治療を受けたいと思うのが普通です。

よく「先進医療」という言葉を聞きますが、こういった方たちには、とても効果的な治療法だと聞き取れてしまいますが、このような考え方は大きな勘違いです。

先進医療はまだ国に認められていない、言わば試作段階の製品みたいなものです。

今後、臨床検査などを数多く行われて、安全性や有効性が確認されてはじめて、多くの人に提供される医療行為です。

病気になった時には、自分の病気に対して何が一番良い治療法なのかを主治医とよく相談して、治療方法を決めて治療に専念するのが好ましく、決して先進という言葉に惑わされずに、「先進医療」の意味をよく理解しておくことが大切です。

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