ラ・フォル・ジュルネ TOKYO
概略
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO(以下ラ・フォル・ジュルネ)はクラシック音楽の演奏を中心とする音楽祭で、ゴールデンウィークに東京都心で毎年開催されます。
ちなみに「ラ・フォル・ジュルネ」は熱狂の日ということです。
丸の内のオフィス街に近い東京国際フォーラムがメイン会場となり、近隣のビルのエントランスホールや公共空間などを使用して多くの演奏会やセミナー、展示、ワークショップなど多彩な内容です。
一般のクラシック音楽の演奏会と違って低料金、年齢制限も緩やかで、会場周辺には食事や飲み物の屋台が出店して飲食もできるなど、クラシックファンだけでなく、ファミリー層も楽しめる音楽イベントです。
経緯
1995年、フランスのナントという町でラ・フォル・ジュルネは初めて開催され、新しいコンセプトの音楽祭として、非常に注目されました。
それは『一流の演奏を低料金で提供し、明日のクラシック音楽の新しい聴衆を開拓する』 というもので、手軽にクラシック音楽が聴ける機会として徐々に浸透していき、ポルトガルやスペインでも催されるようになりました。
料金は、1公演5ユーロ程度から高くても22ユーロまで、日本円にすると650円から3000円ほどで、通常のクラシックの演奏会に比べると破格の安さです。
この催しが日本版として2005年に初めて開催され、以後毎年回を重ねています。
そして今では『ラ・フォル・ジュルネTOKYO』として、ゴールデンウィークに都心の有楽町・丸の内界隈を中心に開かれる、おなじみのイベントになっています。
特徴
一般のクラシックのコンサートの料金は、国内のオーケストラでも一番安い席で3000円前後かかります。
これが海外の一流のアーティストやオーケストラだと数万円するのが普通です。
それに加えて未就学児童の入場制限やドレスアップして長時間咳ひとつ立てられない、などなどどこか堅苦しいイメージがクラシック音楽にはあり、敷居が高いと感じられてしまう原因だとされています。
これに対してラ・フォル・ジュルネでは、最も高い席が4000円で、しかも海外からの一流アーティストの演奏が聴けるという、願ってもないお話です。
また、一つの公演は長くても45分で、これも長時間席を立てないのが普通のクラシックコンサートと大きく違っている点です。
基本的に年齢による入場制限はなく、子供向けのプログラムも用意されていて、さらには無料のコンサートがエリア内のいたるところで開かれるので、ファミリー層にもぴったりのイベントではないでしょうか。
春の爽やかな陽気の中でビールやワインを片手に、どこからともなく音楽が聞こえてくる・・・という、そんな少し贅沢で豊かな時間がすごせます。
今年のテーマと聴きどころ
この音楽祭は、当初はモーツァルトやベートーヴェンなど、クラシックの巨匠をはじめとする個別の作曲家をテーマとしていましたが、2011年から多くの作曲家の様々な作品を聴けるように、広がりある概念や事象をテーマに選んでいます。
今年(2018)のテーマは「モンド ヌーヴォー 新しい世界へ」。
これは過去、多くの作曲家が自国以外での生活を送ったこと、そしてそれは政治的な理由など、必ずしも本人が望んだことではなかったこともあり、作品には故郷に対する強い郷愁の念や、新しい地での希望や欲望などが反映されて、意義深い作品となっているものが多くあるとのことからです。
この音楽祭の生みの親であるアーティスティック ディレクターのルネ マルタン氏は、「壮大な歴史のうねりと作曲家の人生が交錯して生まれた、心揺さぶるドラマをご堪能ください」と語っています。
このテーマをもとに
1.全体主義体制や内戦から逃れ、新しい世界へ亡命・移住した作曲家たち
2.自らの意思で母国を離れ、新しい世界へ移住した作曲家たち
3.魂の深淵に新しい世界を求めた作曲家たち
4.ワールドミュージック、ジャズ、映画音楽 の4つのサブテーマが設けられています。
1.ではラフマニノフやプロコフィエフのピアノ協奏曲に、ロドリーゴのアランフェス協奏曲など。
2.ではおなじみドヴォルザークの「新世界より」。
3.にはこれもおなじみベートーヴェンの「英雄」やシューベルトの「冬の旅」。
4.では民族音楽やブルース・ニューオリンズジャズ、さらには太鼓なども演目として用意され、入門者にもわかりやすく、ポップ系も取り上げるなど幅広いプログラム構成です。
また45分という短く区切られた演奏時間のため、時間を持て余すようなこともありません。
まとめ
長い歴史と伝統を誇るクラシックは、冒頭に書いたようにある種の敷居の高さが指摘されてきました。
またその芸術性の高さゆえにわかりにくい、難しいというイメージも拭えません。
そういったクラシック音楽についてのマイナスイメージをガラリと変えてしまうような、安くて、わかりやすくて、肩肘張らないスタイルの提案は、新しいマーケットを創出する可能性を秘めているものでしょう。
天才作曲家たちによる偉大な作品と、それを再現する一流演奏家たちが作り上げる芸術が、敷居が高いとか、堅苦しいというイメージで敬遠されるのは非常に残念なことです。
また純粋な子供の魂には、大人が考えるよりもはるかに敏感に、音楽の素晴らしさが響くかもしれません。
そういった観点から、ラ・フォル・ジュルネが、こうして多くの人々にクラシック音楽が親しまれる機会を作り出していることに、非常に大きな意義を感じます。
来年の連休、東京でクラシック音楽はいかがでしょうか?
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