安全保障と外交と米朝会談
現在国会の場での議論を見ていると、情けなくなります。
確かに、モリカケや行政のフシダラ、隠蔽は、追及に値するところではありますが、多額の税金を使って国会の議論としては不満を持っておられる方も多いのではないでしょうか。
外交安全保障とはレベルが違いすぎます。
米朝会談について以下に思います。
概略
度重なる国際社会からの警告にもかかわらず、核兵器開発を進めてきた北朝鮮の金正恩委員長と、アメリカのトランプ大統領による初の首脳会談が、今月下旬からから来月初めに開催の予定で準備が進められています。
北朝鮮による核兵器開発については、現在アメリカ本土を射程圏内とする大陸間弾道ミサイルに、核弾頭を搭載する直前まで開発が進んでいるとされています。
自国の安全保障という最大の国益確保を目的とするトランプ政権と、国際社会からの厳しい制裁の解除と現体制維持を目論む金正恩委員長との会談は、我が国にいかなる影響を及ぼすのかを考えてみたいと思います。
これまでの経緯
米朝両国の関係は、朝鮮半島の停戦以来国交がないまま冷え切ったものでしたが、1993年に軍事衛星により、北朝鮮の核開発疑惑が明らかになって以降、新たな局面を迎えます。
核拡散防止条約やIAEA査察問題などから両国の関係はこじれ、ジョージ W ブッシュ大統領が就任して、2002年の一般教書演説で「悪の枢軸」として非難すると、両国の緊張は頂点に達しました。
オバマ政権での核軍縮の動きなど緊張緩和への兆しがなくはなかったのですが、度重なる北朝鮮の不誠実な対応が重なり、進展と呼べる事態には至っていませんでした。
今回の米朝の首脳会談実現の動きとなる前段階までの動きは、平昌オリンピックを契機とした南北融和路線でした。
この流れから南北首脳会談が実現し、席上金正恩委員長は、唐突とも言える形で朝鮮半島の非核化について議論する意向を表明したのです。
なぜでしょうか?
この動きの背景には国連決議による北朝鮮への制裁が影響していることは間違いありません。
焦点は非核化の手法
非核化とは、核兵器を保有したり使用することはもちろん、開発や実験などもしないことです。
この意思を表明したのであれば、通常であれば歓迎すべき会談内容です。
しかし先月22日に表明された声明では、既存の核兵器の廃棄については一言も述べられていません。
加えて北朝鮮は、1994年に米朝枠組み合意での『核開発の凍結』や2005年の6カ国協議での共同声明にある、『すべての核兵器と既存の核計画の放棄』を反故にするなど、これまで何度も米国や国際社会を裏切ってきた経緯があります。
従って「非核化」という言葉で手放しに喜ぶのではなく、それがどのような形で完全かつ検証可能で不可逆的な非核化そして実行されるのか、ということが今回の焦点であると言えます。
米国のこれまでの複数の政権が、北朝鮮にはいいようにあしらわれてきているとも言えるわけで、トランプ大統領はこの一点にのみ最高度に集中して会談に臨むと予想されます。
非核化については「リビア方式」と呼ばれる非核化を先ず先行させ、その後に制裁を解除するというやり方が望まれていますが、これについては北朝鮮側が強く抵抗することが予想され、予断を許しません。
我が国への影響
経済制裁を中心とした圧力の解除と現体制の継続維持を求める金委員長と、米本土の安全保障の確保が目的のトランプ大統領の駆け引きについて、米国の同盟国である我が国は、どのような立場でその行方に対して、対応をして行かねばならないでしょうか。
仮に双方の目的が100パーセント達成されたとした場合、すなわち朝鮮半島の核兵器が廃棄され、金正恩体制が継続した場合、我が国への影響を考えてみます。
米国本土を狙う核兵器は廃棄されますが、我が国を射程とするノドンなどの中短距離弾道ミサイルやその発射施設が同列に廃棄されるということはないと思われます。
すなわち、核弾頭は搭載されずとも、我が国全域を射程とするミサイルは依然として配備されたままであるという現実が残ります。
また、米朝平和条約締結などの流れとなれば、在韓米軍の撤退が現実味を帯びてくるわけで、我が国は安全保障の観点から半島情勢に対する新たな分析と、それに基づく対応についての検討を早期に開始する必要性が生じると思われます。
一方、金正恩委員長が非核化について、段階的実施など、条件面で米側が難色を示す状況が発生し、交渉が難航した場合はどうでしょうか。この場合、米国による軍事行動も予測の範囲に含める必要があると考えられます。
この場合、核開発施設や核兵器関連施設に限定された攻撃となり、前述の中短距離弾道ミサイルなどの日本に対する攻撃能力は残ります。
したがって、我が国にとっての北朝鮮の脅威は、会談の行方に関わらず依然として残されたものとなる可能性が高いことを指摘しておきたいと思います。
また、わが日本においては、北朝鮮との間に「拉致問題」を抱えていますので、米朝の核問題や大陸間弾道弾と、複雑に絡んでくるのでなおさら厄介な問題となるでしょう。
まとめ
現在我が国の国政の場において議論されている諸問題は、ほぼ全て今回の米朝首脳会談とは関係性の薄い事項です。
安全保障と外交は財政と並んで国会で議論すべき事項の最重要項目のはずですが、野党による審議の拒否が続くなど、この情勢に対する政府や自民党の方策などが報道されることはほとんどありません。
北朝鮮は我が国を名指しで敵国とし、核兵器を開発し、現実に我が国全域をミサイル射程圏に捉えています。
いたずらに危機を煽るわけではありませんが、最悪の事態の想定についてはどのレベルとされていて、対策として何をどうするのか、ということを国民にしっかり示すことは政治の責任だと考えます。
我が国は護憲勢力を中心に安全保障アレルギーとでもいうような、国防問題についての議論を忌避しようとする動きが見られますが、北朝鮮はそういった動きを嘲笑うように着々とこれまで核武装を進めてきました。
国政の場において、焦眉の急として建設的議論を行う時期にあると思います。
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