先日の東京の続きです。
上野の森美術館で開催中の『怖い絵展』に行ってきました。
開催期間・・・10月7日 (土) 〜 12月17日 (日)
開館時間・・・10:00〜17:00
入場料金・・・一般1,600円
ドイツ文学者・中野京子氏が2007年に上梓した『怖い絵』は、「恐怖」をキーワードに西洋美術史に登場する様々な名画の場面を読み解き、隠されたストーリーを魅力的に伝える本としてベストセラーとなり多方面で大きな反響を呼びました。
同書の第一巻が発行されてから10周年を記念して開催する本展は、シリーズで取り上げた作品を筆頭に「恐怖」を主題とする傑作を選び出しテーマごとに展示します。
視覚的に直接「怖さ」が伝わるものから、歴史的背景やシチュエーションを知ることによってはじめて「怖さ」を感じるものまで、普段私たちが美術に求める「美」にも匹敵する「恐怖」の魅力を余すことなく紹介する、今までにない展覧会です。
平日でも、混雑はすごくて1hくらいは覚悟のことですね。
土日祝なら、もっと凄いことになっているでしょう。
そんなに絵画に興味があるわけではないのですが、知的好奇心(全くないけど)かな。
先月は、札幌でゴッホ展に行ってきました。
自分としては、絵の説明を聞いても,よくわからないところが多く、芸術には疎い人間だと思っています。しかし、皆さんが行ったり、話題になったら、自分も行ってみようかなって思ってしまいます。
この絵を描いたのはどの時代の画家で、なんの技法が用いられていて、非常に素晴らしいという説明が書かれていても「そもそもその画家も知らないし、この絵も何が描いてあるのかすらわからないなあ」という、芸術音痴の自分ですが、非常に楽しむことができました。
『怖い絵展』は中村京子さんが書いた『「怖い絵」で人間を読む』という本から生まれた展示会だそうです。
私はこの本を読んだことはなかったのですが、この『怖い絵展』を通して、本に興味がわいて購入してしまいました。
この『怖い絵展』のおもしろいところは、見るからに怖い絵はもちろん、一見怖くはないがどこか不気味さを感じる絵など、様々な種類の「怖い絵」が展示されていることです。
もう見るからにグロテスクなものもあるのですが、美しい緑あふれる庭にいる親子の絵なんかもあるわけですが、そのすべてがきちんと「怖い絵」なんです。
音声案内は吉田羊さんでした。
落ち着いた声で、怖い絵たちが怖い理由を説明してくれます。
たとえば飢饉で多くの人々が亡くなった時代に描かれた、空腹に耐えかねて自殺する親子の絵画があります。
この絵画は見るからに怖い、悲しい絵なのですが、この作者もこの絵を描いた後に自殺をしているという説明を聞くと、時代の厳しさ、飢えの怖さを痛感し、怖さも倍増します。
見るからに怖い絵も、そうでない絵も、『怖い絵展』に飾られているものは、深い歴史があるからこそ、怖いのだそうです。
この『怖い絵展』のチケットやホームページにも使われている絵画がポール・ドラローシュ作『レディ・ジェーン・グレイの処刑』です。
『怖い絵展』の最後にどんと飾られたこの大きな絵は美しい絵なのですが、説明を聞くまでもなく、描かれた人々の表情から、これは悲劇の真っ最中の状況なのだということを痛感させられます。
これは、16歳と4か月で首を斬りされた、9日間だけ玉座に座った女王の処刑シーンです。
まだギロチンが開発される前の時代だったので、画面右手の処刑執行人は斧を片手に少女を見ています。その腰にぶらさげられたナイフは、当時の死刑の残酷さを語っています。
ギロチンは、きれいに首を斬り落とすことのできる画期的な処刑器具として普及されていきました。つまり、そのギロチンが開発される前に使用されていた斧では、きれいに首を斬り落とすことはできなかったのです。
斧の一振りで人間の首を斬り落とすことはたいへん難しく、そのため当時死刑を執行された人々はひどく苦しんで死を迎えていました。
その死を少しでも楽にするために処刑執行人はナイフを腰に携えているのです。
苦しむ罪人を楽に殺すための道具がそのナイフでした。
画面左手は若くして殺される女王の悲劇を嘆く侍女たち。
若い女王の後ろで彼女を支えているかのように見える男性は神父で、目隠しをされた女王が首を斬られるための台に頭を乗せるのを手伝っているのです。
その台の下に敷かれたのはわらで、首からあふれ出る血液を吸収するために、敷かれていたものだそうです。
この説明を聞いただけでも、『怖い絵展』の怖さの説明がいかに詳細で怖いものかということがおわかりになるのではないでしょうか。
『怖い絵展』の目玉である『レディ・ジェーン・グレイの処刑』は、これが初来日ですから、
次にいつ本物をお目にかかれるかはわかりません。
ぜひ、この機会に足を運んでみることをオススメします。
怖いですよ!!
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